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ラーメンに関する素朴な疑問から、札幌周辺のオススメ情報まで…
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ラーメン評論家 野坂郡司コラム

プロフィール

野坂郡司

昭和15年樺太生まれ、サラリーマン時代、故伊丹十三監督の映画「たんぽぽ」を見てから、本格的に「ラーメン食べ歩き」を始める。
以来、のべ約2500軒以上の店を食破し「ラーメン奉行」のニックネームで日刊スポーツ新聞のラーメン店コラム掲載やHTBテレビの夕方DON!DON!のレギュラーなどを1年間努める。現在は、HBCラジオ「山ちゃん直子のラジオマガジン」(月末1回)のレギュラーを努める他、全国的にも珍しい「ラーメン評論家」としてラーメンコンサルタント、ラーメンアドバイザーとしても活躍。
監修著書に「北のラーメン屋104軒」(イベント工学研究所)がある。

札幌で食せる「ご当地ラーメン」

ご当地ラーメンのネーミングとブームが定着してから久しいがこの「ご当地ラーメン」を語るとき10数年前札幌ススキノのあるラーメン店を思い出す。店主は九州長崎の出身。「九州ラーメン」をうたっていた。
博多ラーメンとも鹿児島ラーメンとも一味違うラーメンだがゲンコツ「間接部」は大量(60〜80kg)に使っていた。その為豚臭さが外にも漂っていたのかも知れないが入り口のガラス戸を割られたりの嫌がらせに遭い遂に「九州」の2文字外してしまった程。
ヨソ者を受け入れない時代だったのかも知れないがこの事実は悲しい。(しかし後にこの店は人気店となっているのでご安心を)

その後も各地のラーメンが登場した。喜多方ラーメン(3軒)珍しい富山ラーメン(2軒)などがあったがいずれも今はない。(喜多方ラーメンは残して欲しかった)旭川ラーメンではみそラーメンの有名店が3店進出したがいずれも撤退してしまった。

熊本ラーメンも北24条にあったが閉店したまま復活はない。現在は旭川ラーメン(60軒弱)を筆頭に函館(3軒)、東京、横浜、京都(苫小牧)、佐野(苫小牧)、福岡、熊本、鹿児島等のご当地ラーメンがあるが数は、少ない。又全国的に「ご当地ラーメン」とは認知されてはいないが釧路、帯広、幕別、富良野、岩見沢、小樽に九州長浜ラーメン等々がある。

最近ある民放でインターネット上で人気の「ご当地ラーメンベストテン」というのがあった。我が札幌ラーメンは下位の7位。ベストスリーは3位和歌山ラーメン、2位は佐野ラーメンで第一位は九州博多ラーメンという結果。今話題の函館もランク外に。これが最近の傾向なのか?

最後に小生のすすめる札幌・近郊の「ご当地ラーメン」を4軒紹介しよう。

旭川ラーメン
店名
元祖旭川ラーメン「味の万雷」
住所
札幌市西区発寒12条3丁目5−12
11:30〜20:45 火定休 (011)666-7920
イチオシ商品
とん塩ラーメン、醤油ラーメン各600円
(3日かけてつくるスープと脱サラ組の成功例)
函館ラーメン
店名
函館ラーメン「麺くい」
住所
札幌市中央区南22条西10丁目5―1
11:30〜22:30 月定休 (011)533-0605
イチオシ商品
塩ラーメン580円
(本格的函館の塩ラーメン味わってみて!)
函館ラーメン「麺くい」
「麺くい」のおすすめメニュー「チャーシューメン」。価格は800円だ。
京都ラーメン
店名
京都屋台味 かんかく
住所
苫小牧市明野新町1−1−12
11:00〜1:00 無休 (0144)57-3020
イチオシ商品
かんかくラーメン580円
(意外や意外、こってりの醤油ラーメン)
京都屋台味 かんかく
代表メニューかんかくラーメン、京都と言うとあっさりの和風味をイメージするが実際は、濃厚なこってり味だ。
佐野ラーメン
店名
佐野ラーメン「味の大作」
住所
苫小牧市美園町2丁目2-9
11:00〜22:00 無休 (0144)31-3135 16席 駐車場あり
イチオシ商品
ラーメン650円、カレーラーメン700円、
ネギラーメン(シラガネギ)650円、チャーシューメン750円
(青竹手打ち麺を道内で唯一食せる店)
佐野ラーメン「味の大作」

「味の大作」の店名とはミスマッチの様だが実は、北海道で唯一栃木、佐野ラーメンを食せる店なのだ。小麦粉の産地でもある佐野ラーメンのルーツも大正時代と歴史もある。

麺に顕著な特徴がある青竹手打ちという製麺方法(大正末期〜昭和初期は、札幌でもこの製麺方法だった)で作られる。手打ち故に厚さ、太さもまちまちな加水率50%の多加水麺。茹であがりも早いがのびるのも早いので猫舌、食するのが遅い人には、キツイ。

ご主人は、その栃木生まれで佐野で20年その後、東京で20年過ごすがラーメン修行では、なく本業は、フランス料理。東京のラーメンもいろいろ食し苫小牧へは、料理指導に。そこで釧路出身の奥さんと一緒に店を出すことになるが栃木、佐野では、学生の頃まで食べていたラーメンを出して北海道の人達にも食べてもらいたいと思ったそうだ。麺は、佐野からの直送で職人が青竹打ちしたものを一回300食仕入れる。

スープは、佐野ラーメンの基本の澄んだ醤油味のみ、チャシューは、さすがフランス料理の腕を生かしたモノで一味違う旨さあり。他の具もスープに合うモノと独自の作り方をしている。更に特筆すべきは、カレーも旨いのだ。スリランカ、インド両カレーは、ご主人のオリジナルを加え注文の3割を超える。勿論両方、味わうのも良し。前述の京都ラーメンに加え佐野ラーメンと道都札幌では、なく何故、苫小牧なのか謎では、ある。ご主人のコック服にコック帽もユニーク。

食材にこだわるラーメン店

豚ガラ、鶏ガラから進化し続けるラーメンも今やより味の個性化、多様化を求められる時代となりラーメン店としても如何に支持されるラーメンを作り提供するかが課題となりつつあるが原点のガラスープの旨さで勝負するのも一つのラーメン店のあるべき姿ではないだろうか。又一方ではその食材のこだわりは良いが生かし切れずにいる店も散見出来るが、いかがなものか?こだわりの食材は、生かさなければこだわりの意味なし。一方では、高齢化、少子化、女性客を意識したヘルシー指向の食材の追及も求められる。

その中にあって恐らく道内では勿論一番こだわりの食材使用の店はここ、「支那そばや」(札幌市・中央区)であろう。名古屋コーチンの丸鶏と卵、和歌山天然醸造醤油、中国福建省の「福塩」(開店時の伊豆大島産自然海塩、海の精から変えた)、沖縄産粟国の塩、青森陸奥湾産帆立具柱、枕崎産本節、屋久島産さば節、自家製の麺も道産はるゆたか、コーチンの卵、内モンゴルのカン水、薬味、具もワンタンにコーチンの挽肉、静岡県由比町の生桜エビ、ネギに京都「九条ネギ」、海苔は熊本産「有明のり」のこだわりは旨さに表現されて価格も納得出来る。

今年の4月25日、オープン以来ネットの情報等で高評価を得ている店、「麺屋三四郎」も食材にこだわるラーメン店のひとつだ。前職は、旅行会社の添乗員(海外殆ど)でラーメンに魅せられ家族ごと来道してから修行先を決めたというほどでラーメンに対する姿勢は、並々ならぬものが感じられる。

「山頭火」で2年修行後オープン。店も仲通りで一見目立たないが店内も清潔感溢れ接客もスマートで他のラーメン店にない洗練さを感じる。限定の潮(しお)ラーメン(鶏ベース20食)には、北海道では、この店だけであろう。鯛干し(東京)、調布の「千ひろ」で使っているが。また「さんま節」も道内初であろう。これは、あの東京、新宿麺屋「武蔵」で使っていることは、あまりにも有名!これを機に北海道でもより魚ダシにこだわる店が増えるのではないかと推測される。塩は、沖縄のイリ塩使用で各素材の旨さを見事に引き出されている。インパクトは、少ないがついつい飲み進み飲み干してしまう程。麺は、旭川加藤ラーメンの特注で加藤ラーメンの中でももっとも細いという細麺使用。

他店でもこだわりの食材は数々。以下列挙しよう。チャーシューに本ロースの「ぜにばこ拉麺屋」(小樽市・桂岡)辛みそに本場韓国の唐辛子「冬冬」(札幌市白石区、清田区)羅臼の海洋深海水とその濃縮塩水、トンコツはホテルご用達のアルカリイオン水飼育の豚「ラー軒」(札幌市・南区)故郷利尻産の昆布を生かす「小巾亭」(札幌市・中央区)中国福建省の高価な「福塩」の「園萬店」(札幌市白石区)道産豚の生骨生肉にこだわり「えれのラーメン」(札幌市白石区)中国三億年前の岩塩を独自ルートで入手「どっこ」(札幌市中央区)又「鳳凰」と云う深層海水の「天然塩」の「蘭花」(札幌市東区)鹿児島県直送の黒豚チャーシュー「末広」(札幌市白石区)減農薬の野菜、しょうゆ、みそも減塩「龍(RON)」(札幌市東区)海藻類(岩ノリ、昆布、茎ワカメ、フノリ、ワカメ)にこだわる「成龍」(石狩市花川南)日本一のダシ昆布、尾札部昆布使用「麺くい」(札幌市中央区)等々に枚挙にいとまはない。ラーメンの味に究極はない。食材を生かし切ってこれからもより旨い!ラーメンを食べさせて欲しいものだ!

元祖ラーメン横丁
素材の鬼と呼ばれるラーメン界のカリスマ、佐野実さんののれん分けの店。全国から集めた材料の個性を生かし、バランスのとれた絶妙の味にしあがっている。
新ラーメン横丁
醤油ラーメン 750円

ラーメンの価格について考える

ラーメンの適正な価格は、果たしていくらが妥当なのであろうか? よく論議される事である。奉行個人として叉よく出る話の中では、「ワンコイン(500円)」という声が多いがこれは、あくまで理想の価格ということ。それでは、ラーメンの現状の価格は、いくらになっているのだろうか?

平成12年度の小売物価統計調査年報によると札幌ラーメンの価格は、一杯当たり695円とある。ちなみに他都市は、どうかと云うと最安値は、東大阪市(大阪府)の377円。福岡は、461円。東京でも543円どまりで殆どの都市が400円〜500円台で600円を超えたのは、鹿児島と立川だけで道内では、旭川513円、函館501円という価格になっている。

だがこの統計は、一つには、醤油、味噌ラーメンの価格中心なのと各都市僅か数店の平均値でありしかも著名な店の統計である事からしてこれがイコールその都市の平均値とは、云い難い。事実奉行が昨年出版した「北のラーメン屋104軒」掲載店の平均価格は、615円〜620円叉他のラーメンガイドブックの編集部調べでも630円前後であり700円近い平均価格とは大差がある。確かに有名店の価格は、殆どが650円以上、最高は、850円と600円以下は、皆無に等しい。加えて新規店のオープンラッシュ等々の条件からしても既に統計的には、古いと云わざるを得ない。叉札幌市の場合について云えばススキノ地区の700円という価格が基準になっていた感は否めない。そのススキノでは、最近、750円(一部メニュー)という金額までが出現。逆に同じススキノでも500円という安価なラーメンでデフレスパイラルの傾向も出始めているにもかかわらず、逆に高額化も更にエスカレートし早晩800円の店も現れてきそうで危険だ! 勿論ラーメン店にも言い分はあろう。平成11年12月号の「道新today」の掲載記事「値段は、日本一の中で奉行は、ラーメン店擁護派の立場の意見を述べており、真面目にやればやる程、儲からないのがラーメン店という店主は、多い。

「ラーメン店は、丼の中から儲けようとしては、いけない」とある店主は、云っていた。理想の500円は、無理としても600円〜650円に抑えるには、相当の経営努力を余儀なくさせられる。しかも旨くなければ経営として成り立たない。つまり「高い」と云われるのは、味が価格と一致しない故では、ないか。事実、奉行本(北のラーメン屋104軒をちまたでは、こう呼んでいるらしい)の取材でも判った事だが500円や600円以内で旨い店は、多々あったが現実には、旨くて安いだけでは、流行らないという図式がある。結果まずくてもマスコミの力、店名の力、宣伝広告の力で繁盛する店が多いのも事実なのだ。

それでは、何故にして安くて旨い店を見つけたらいいのか。これは、やはり「足と舌」で稼ぐしかないのでは? 情報誌、ラーメン本、テレビ、ラジオ、インターネット等の有り余る情報を鵜呑みにせず(奉行の情報は、鵜呑みにしてもOK)自分の足(車でも可)と舌を鍛える事。そうすれば500円〜600円のお金も無駄には、ならない。そしてラーメン店側も今のラーメン激戦の時代を生き抜くためにも味は、勿論、サービスを含めトータルとしてラーメン造りを目指して頂きたい。その事が価格=味=旨いラーメンの整合性が生まれて来るものと思う。そんな整合性のある店、妥当な価格の店がこの21世紀を生き残る条件になっていくのでは、ないだろうか? 国民は、常に旨くて安いラーメンを求めている事を各ラーメン店店主は、忘れては、いけない!

このデフレスパイラルの今、思い切って期間限定で半額(300〜350円とか)等のサービスで話題性を作るとかしてみる勇気のある店は、無いものか? これも厳しい世相を生き抜く手段である事も考慮に入れて貰いたいものだ。「国民食の代表」、「B級グルメの代表」であるラーメンの理想の価格は、再度、声を大にして云いたい。ワンコイン500円であることを!!

幻のラーメン「富公」の話

幻のラーメン「富公」の話
亡くなる前の1年間は、闘病生活の中、店を開けたり閉めたりの日々が続いた「富公」。
「臨時休業」の張り紙は、いつしか「富公」を愛する顧客達の励ましの寄せ書きとなっていった。

この幻のラーメンについて書こうと思ったのは、ある異業種オーナーの方達のセミナーへ講師として行った時、有名ホテルの札幌所長(女性)から「是非まとめてみて」と云われたことに端を発する。叉ラーメン談義の中で事あるごとに必ず登場するのが「富公」(とみこう)であろう。

まず「富公」の開店から。場所は、札幌市中央区南1条西2丁目仲通り(カナリア洋服店裏)時は、昭和35年12月。店主は、菅原富雄さん。この場所は、元々お父さんと2人で靴店を営んでいたいた所だがこの頃から既に手作りの注文靴の仕事もあまり入らず小松靴店(現パルコ)からの修理の下請けだけでは、靴店は、立ち行かない。

ある日、父親が「靴店をやめる」と云った時、即「ここでラーメン店をやる!」と決め父親に承諾を得る。元々ラーメン大好き(今のラーメンフリーク)でラーメンを食べ歩いていて「味の三平」の常連でもあったので早速「味の三平」に恐る恐る「ラーメン屋をやりたいので教えて貰えないでしょうか」と頼み込む。その時、故大宮守人氏は「手を取って教えることは、できないが私の動き(仕事)をよく見る事だな」と。それから菅原さんは、約50日間、夢中で大宮さんのすべてを学ぶこととなる。幸い父親が菅原さんの修行中に店の改装をしてくれていたので修行後直ちに「富公」の開店となる。かくして開店数日後から口コミの効果もあり終日客の絶えない店となる。

一日平均350食、多い日は、500食、雪祭り等の日は、600食もでていたというからその繁盛ぶりがわかろうというもの。それとパフォーマンスとも思える麺あげのアミ玉を釜に叩きつける音と店主菅原さんの大きな怒号の様な声が店いっぱいに響きわたる中、客は、丼に向かい夢中で食し満足して帰って行く。怒られなければ「富公」の客ではないという神話まで生まれた「富公」にまつわる数多いエピソードから2つほど紹介しよう。

ススキノのある店のマネージャー文子さんも「富公」の大ファンで常連だったそうだ。菅原さんから気に入られ、「どうだ『文公』の名でラーメン屋をやらないないか」との誘いを受けた事を大事な思い出として胸の奥にしまっていると云う。

また札幌のある有名ラーメン店の店主は、開店から閉店まで「富公」に傾注した人で狸小路7丁目移転の際は、自分の会社の事務所を「富公」のすぐ近くに移してしまった程の人。お嬢さんが大学受験を失敗し傷心の時、「富公」へ。既に営業時間が過ぎていたにも関わらず、ラーメンを作ってくれたそうだ。この店主が申し訳けないと1300円の代金に2000円をおこうとしたら頑として受け取らなかったと云う。傷心のお嬢さんが美味しそうに食べて元気になってくれた事が嬉しかったのではと話してくれた。

動作、言葉の荒さ(若さ故もあったであろう)とは、裏腹に菅原さんは、本当に、心根の優しい人だったことがこの事からも伺える。常に客を敵と考え真剣勝負を挑んでいたのでは、ないだろうかとも云っている。これから先のラーメン業界でも不世出のラーメン職人菅原富雄さんがこの世を去ったのが平成4年、享年52才だったが今もあの「富公」の香り、匂いのするラーメンが多々存在する事が菅原さんの偉大さを象徴する良き証しであろう。心より冥福を祈る。


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