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ラーメンのひみつ

たった一つの丼の中に麺、スープ、具がフルコースとなって完成する「ラーメン」
最高にうまいラーメンは、この3つの要素が絶妙にマッチしていると言って過言では、ないでしょう。
ここでは、この3要素の秘密についてお見せします。

めんのひみつ 〜小麦粉

1.小麦粉の歴史

小麦

小麦は、1万年以上前からあった。

多くの古代遺跡から、麦の穂や粒が発見されていることからも、小麦は人類最初の作物のひとつと考えられています。今からおおよそ1万年以上も前から、人類はすでに小麦を食べていたといえます。

製粉技術の移り変わり

製粉の歴史は少しでもおいしく食べたい……という、人間の強い欲望から生まれたといってよいでしょう。原始時代、人類はすでに小麦を平らな石の上にのせ、石でたたいたり、つぶしたり、すって粉にしていたことは、古代遺跡の出土器からも判明しています。

時代につれて製粉の規模も大きくなり、ローマ時代には製粉を職業とする者が現われ、奴隷や家畜が動力として使われました。その後ギリシャでは水平式の水車が発明されたのに続き、ローマでは水車製粉、イギリス・オランダでは風車製粉が発達しました。

17世紀になってから、フランスで、一度石臼で挽いた粉を篩にかけ、粗い部分を採り分け、これをまた挽いて、再び篩にかける「段階式製粉方式」が始まり、現在の製粉工場で使われているような「ローラーミル」が開発されたのは、19世紀に入ってからでした。

わが国には、いつ頃伝わったのか?

小麦が日本へ伝来したのは紀元前1世紀頃と推定されており、今からおよそ2千年も昔の弥生時代中頃には、すでに小麦の栽培が始まっていたといわれています。

2.小麦の知識

日本で使われている小麦

日本で1年間に消費される小麦の量は、約640万トンで、世界でも有数の消費国です。わが国の小麦消費量のうち、国内産小麦は約8%で、残りの92%は輸入でまかなわれています。輸入小麦の国別内訳は、アメリカが約55%、カナダが約26%、オーストラリアが約19%となっています。ちなみに、わが国の国民一人当りの小麦粉消費量は、年間約33Kgです。

小麦の種類と用途

小麦は栽培の季節によって、「春小麦」と「冬小麦」、粒の色によって、「赤小麦」と「白小麦」、また、粒の硬さによって、「硬質小麦」「中間質小麦」「軟質小麦」に分けられます。

硬質小麦 たんぱく質を多く含んだ小麦で、粒が硬く、主に強力粉に加工され、パンや中華麺用の小麦粉になります。アメリカ産とカナダ産が主となります。
軟質小麦 たんぱく質の含有量が少ない小麦で、粒は柔らかく、主に薄力粉に加工され、クッキー・ケーキなどの菓子類や天ぷら用の小麦粉になります。主にアメリカ産です。
中間質
小麦
たんぱく質の含有量は中くらいで、粒の硬さも中程度で、主に中力粉に加工され、うどんや乾麺用の小麦粉になります。オーストラリア産と国内産が主となます。

3.小麦粉の知識

小麦粉の種類(性質)と用途

小麦粉にはいろいろな種類がありますが、これを系統的に用途別分類と等級別分類との2つに分けてみると、解かりやすいと思います。

品質特性(用途別)による分類
強力粉 中力粉 薄力粉
グルテンの量
  • 多い
  • 少ない
グルテンの質
  • 強い
  • 弱い
原料小麦の種類 硬質小麦
硬質小麦
中間質
または
軟質小麦
中間質小麦
軟質小麦
軟質小麦
主な用途 食パン、菓子パン、中華麺、ギョーザの皮、ピザなど うどん、乾麺、その他の料理など ケーキ、菓子、天ぷら、その他の料理など

これは、小麦粉の用途面からの分け方です。すなわち、小麦粉はパンや中華麺に用いる強力粉、うどんや素麺・冷麦などの乾麺に用いる中力粉、菓子や天ぷらなどに用いる薄力粉といった種類に分けられます。このような種類ができるのは、その小麦粉に含まれるたんぱく質(グルテン)の量と質が違うからです。また、このような性質の違いはさらにさかのぼれば、その小麦粉をつくる原料小麦の性質の違いによるものなのです。

なお、上記種類のほかに、マカロニ類に用いる特殊な粉として、デュラム・セモリナという小麦粉もあります。

品位特性(等級別)による分類
特等粉 一等粉 二等粉
色相 優良 普通
灰分 約0.30〜0.35% 約0.35〜0.45% 約0.45〜0.60%

これは、小麦粉の純度(皮部細片の混入度)による分け方で、特等粉、一等粉、二等粉といった種類に分けられます。この分け方の目安となるのが、灰分量です。灰分とは小麦粉を燃焼した時に残る灰の事であり、この灰分量が多くなるほど、小麦粉の色相が悪くなります。

小麦粉の等級別による色相の違い
小麦粉の等級別による色相の違い

以上のように、小麦粉は用途別の分類に加えて、等級別に分ける事ができるため、非常に多くの種類の小麦粉があるのです。

小麦粉特有のたんぱく質グルテン

小麦粉に水を加えて捏ねると、粘着性と弾力性を持ったガム状の物質が出来ますが、このガム状の物質の事をグルテンといいます。

このグルテンは、小麦粉に含まれているたんぱく質の中で水に溶けない性質を持ち合わせている、グルテニンとグリアジンという2つのたんぱく質から成っており、グルテニンの弾力性とグリアジンの粘着性を持ち合わせたものが、グルテンです。パンがふっくらと膨らんだり、うどんや中華麺のシコシコした歯ごたえはグルテンの働きによるものなのです。

中華麺に最適な小麦粉とは?

先にご説明したとおり、一口に小麦粉といっても、いろいろな種類がありますので、用途に応じて、小麦粉を選定しなければなりません。前項で説明した小麦粉の分類の仕方で表現すると、強力粉の一等粉が中華麺に適した小麦粉と言えるのです。
ただ、同じ強力粉でも、パン用向けと中華麺用向けの小麦粉があり、それを区別するために、製粉メーカーでは中華麺用向けの小麦粉を準強力粉と表現する事があります。

各製粉会社は中華麺に適した小麦粉を製造するために、色相及びグルテンの量や質等を総合的に検討して、独自の原料配合、そして、独自の製粉方法で、製品開発に取り組んでいるのです。参考までに、生めん類の表示に関する公正競争規約施行規則において、「本場札幌ラーメン」を表示する場合の原料小麦粉の基準として、たんぱく質が11.0%以上、灰分が0.38%以下の小麦粉を使用するように決められています。

小麦粉の保管方法
  1. 開封後はしっかりと封を。

    虫は、私たちの生活環境のいろいろなところにいますので、当然、小麦粉にも侵入する可能性があります。また、さまざまな異物も身近には存在しています。よって、虫や異物が入らないように、開封部分をしっかりと閉めるようにして下さい。

  2. 湿気にはご注意。

    小麦粉は湿気に敏感で、高温、高湿なところに置いておくと湿気を吸い、カビが発生したり、かたまったりして、品質そのものが変わる事がありますので、涼しく湿気のない場所に保管してください。

  3. 強い臭いは避けて。

    小麦粉は他の臭い(洗剤、灯油、化粧品など)がつきやすい性質があります。小麦粉の風味が損なわれますので、臭いの強いものと、いっしょに保管するのは避けてください。

以上、小麦粉について説明してきましたが、一口に小麦粉といっても非常に奥深いものである事が、おわかりになったのではないでしょうか?用途に合った小麦粉を選ぶのが、上手な小麦粉の使い方なのです。

資料提供:横山製粉株式会社 
札幌市白石区平和通5丁目南2番1号

めんのひみつ 〜かんすい・水

かんすいは、ラーメンの麺にとって欠かす事の出来ない副原料で、これによりラーメン独特のコシと風味、スープとの絶妙なバランスを生んでいると言っても過言ではありません。さて、この「かんすい」とはどんな物なのでしょう……。

かんすい

かんすいの歴史

かんすいの起源についてはこれが本当の説というものはないのですが、約1700年前頃に中国奥地で湖沼から湧き出る水を小麦粉のこね水に使用したのが始まりではないかと言われています。この水の主成分は「炭酸ナトリウム」だったとのことです。その後は湖沼が乾期に干上がり、湖岸・湖底に残った乾固物を水溶して使っていました。

又、台湾では植物の根・幹・葉を焼いて作った灰汁を小麦粉に混ぜていました。こちらの主成分は「炭酸カリウム」です。

中国内モンゴル自アルシャンメイ吉蘭泰(ジランタイ)の湖
中国内モンゴル自アルシャンメイ
吉蘭泰(ジランタイ)の湖
かんすい
粉末かんすい

現在製麺業者で使用しているかんすいは、ほぼ100%が粉末かんすい(法規上は固形かんすい)で、色は白く、成分は麺質を考え主に炭酸カリウム・炭酸ナトリウムの混合物、又はこれに燐酸塩を加えた物となっています。

そして今は、昭和62年4月より食品衛生法所定の製品検査に合格した製品にしか日本食品添加物協会発行の「かんすい確認証」が添付出来なくなり、食品添加物として安心して使用することが出来るようになりました。以前は工業用の苛性ソーダ・珪酸ソーダ・洗濯ソーダ等の粗悪品がかんすいの原料として使われ、問題となっていました。

かんすいの小麦粉に対する効果

かんすいを小麦粉に加えると蛋白質(グルテン)に作用し、弾力も展延性も増し食味としてはコシ、滑らかさが増します。これは、グルテンが無機質、アルカリ性の物質に出会うと収斂する性質があるからです。

食塩とかんすいの小麦粉に及ぼす影響を比較しますと、小麦粉に水を加えると足があるがコシがない。食塩水を加えた場合コシは強くなるが足がなくなる。かんすいの場合はコシも強く足も長くなると良いことずくめ。このあたりがうどんとラーメンの麺の違いとなって表れてきます。

又、小麦粉中に存在するフラボノイド系色素が、かんすいのアルカリ性と出会い淡黄色に発色します。(但し、札幌ラーメンはよりおいしそうに見せる為、ビタミンB2等で色を調整しています。)さらに、中華麺独特の風味が生じます。

以上のことから、かんすいが札幌ラーメンのコシのある食感とスープとの相性の良さを生み出していることが理解出来ることと思います。かんすいは、ラーメンになくてはならない物なのです。

かんすい用語 〜「ボーメ度」について

かんすいの濃度は「ボーメ度」が用いられています。ボーメ度とはボーメの浮き秤(比重計)によって液の濃度を表示した度数です。ボーメ比重計は純水(15℃)に入れた時に水面と一致する点を0ボーメ度とし、10%食塩水(15℃)に入れた時を10ボーメ度としてこの間を10等分し、この上下に同間隔で目盛りを刻んだもの。かんすいもこのボーメ度で濃度を測っていますが、かんすい10%液が食塩水10%溶液と同じく10度とはなりません。とけている固体の性質が違うからです。しかし、かんすいの濃度はボーメ度で一般的に用いられています。

ボーメ度
ボーメ計

資料提供:横山食品株式会社札幌市白石区平和通14丁目北4番1号

雪解け水

札幌ラーメンが美味しい大きな理由は、麺の製造において手稲山系の良質な雪解け水を使用している点に大きなポイントがあります。札幌のほかにも全国各地にあるご当地ラーメンも水が美味しいところには、有名なご当地ラーメンが多いと言えます。たとえば飯豊山(いいでさん)の雪解け水を使用する喜多方ラーメン、名水百選のひとつ出流原弁天池(いずるはらべんてんいけ)を有する佐野ラーメンなどは、良い例でしょう。

ラーメンを作るには、原料の小麦粉100に対し水35の割合で捏ねることから始まりますが、このことからも水の品質は、ラーメンの品質に大きな影響を与えます。
さて水には、上水道と地下水がありますがどちらの場合でも水道法の水質基準に適合していることが必要です。そしてさらにチェックを要する項目にPH、アルカリ度、硬度があります。

PHとは、水素イオン濃度を示すもので酸性、アルカリ性を数字で表したものです。一般的にラーメンの製造においては、中性から微アルカリ性が良いとされています。

アルカリ度とは、水の中に含まれているアルカリ性物質の含量のことをいいます。自然水のアルカリ物質は、雨水に溶けこんだ炭酸ガスや、土壌中の生物の呼吸で発生する炭酸ガスが、石灰岩を多く含む岩石を通過する際、Ca、Mgを溶解して水中に溶け出すことが要因となっています。製麺においては、アルカリ度が低いことが望ましく、一般的には20ppm以下が良いとされています。

硬度とは、水中に溶けているマグネシウム・カルシウムのイオンの量を数値で表したもので、「軟水」、「硬水」という呼び名で、水質を表す重要な基準のひとつとなっています。ラ―メンを作る際には、アルカリ度が高い「硬水」は不向きとされ、「軟水」が良いとされています。

ここではこれらについての詳細な説明は割愛しますが、ラーメンの製造において、水はきわめて重要な要素で、本州においての水質に恵まれない地域では、水を製麺用に処理することが一般的におこなわれています。

注:ppmソ量百万分率のこと1ppmは、0.001g/1000g


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